(2020.5.28 リライト)
担任を受け持つならば、避けて通れない道の1つが子ども同士のケンカです。
「先生、たかし君(仮名)とあきら君(仮名)がケンカをしています!」
どれどれと、様子を見に行くと激しく興奮した2人と、双方を抱きかかえて止めているお友達と「なんだ?なんだ?」と集まっている野次馬の皆さん。
こういうことは、よくあることです。これは分かりやすい例ですが、「○○君がやなこと言ってくる!」という内容も基本的に同じです。
担任としてどう仲裁すれば良いか、その具体的な方法について書いた記事です。
ケンカの処方
ケンカしている2人は、興奮状態、戦闘態勢で、相手のことが許せない、許してなるものか!という状態ですが、心の奥底では落としどころをほしがっています。
ですからまず、担任が2人の間に立ち、善意で勇気のある「けんかを止めているお友達」に、もう離して良いことを伝えます。先生の介入が始まるので、ケンカ自体は終了です。
次にやることは、事実確認です。
当事者の2人にそれぞれ事実だけを聞きますが、興奮状態なら話してくれないので、勇敢な止め役だったお友達、そして、必要に応じて野次馬の皆さんにも事実を確認していきます。
私のやることは「なるほど、なるほど。」と事実を淡々と確認していくだけです。仲裁しようとか、仲直りさせようなんてことは全く考えていません。このケンカには、どんな学びがあるのかな?という気持ちで聞きます。
すると当事者の子供が主張をし始めます。
あきら「たかしが、何もしてないのに押してきた!」
先生 「・・・そうなの?(たかしに向かって)」
たかし「あきらが蹴ってきたから!」
先生 「・・・そうなの?(あきらに向かって)」
あきら「そっちだって蹴ってきたじゃないか!(再び興奮)」
先生 「・・・って言ってるけど(たかしに向かって)」
たかし「俺も蹴ったけど、そんなに強くない!」
先生 「とりあえず、最初にやったのは誰?」
という具合にお互いの主張を聞きながら事実のみを確認していきます。これは、とてもとても大切な作業なのです。事実だけを確認していくとは、子供が自らの言葉で確認していく、つまり、子供が自分で自分の行動を認識していく過程なのです。自分の行動を振り返っているのを、先生は見守るのです。
※この作業に入ったら、周りにいた盟友、野次馬のみなさんは帰ってもらいます。2人きりの空間にしないと、野次馬のみなさんの目を気にして、自分の気持ちに向き合えないからです。
仲直りするかどうかは子どもが決める
おおよその事実の確認が終わったら、基本的にケンカの仲裁は終わりです。私が審判をくだす必要などないのです。「だいたい分かったよ。で、これからどうする?」と聞くだけです。すると、大抵の場合は「仲直りする。」と言います。
子ども達が仲直りすると言えば一件落着で嬉しくなりますが、私は喜びません。
「そうなの?」と確認だけをします。そして、もし仲直しをするのなら、その方法として、謝ることと握手をすることが有効だということを提供します。
ここまでが無事に終了したら、ようやく「よかったね!」とだけ伝えます。あーだこーだと先生が言うと、せっかくの素敵な空気が汚れます。あくまで、2人の世界なのです。子ども達は本来、自分たちで解決できる力を持っているのです。先生が介入しすぎると、せっかくのチャンスを取り上げてしまうことになります。
場合によっては「仲直りしない!」と言う子供もいます。その時にも私は残念がりません。「そうなの?」と確認だけをします。そして、「じゃあ仲直りは、今はできないということだね。」と確認だけして教室に戻します。
たいていの場合は、少し時間をおいてから、2人仲良くやってきて「仲直りした!」と報告に来るので、ここでは喜びます。「先生なしで2人だけの力で解決したなんて、すごいじゃないか!」ってことです。
つまり、先生はケンカをやめさせて仲良くさせるのを目的にしてはいけないのです。子ども達自身が自分たちでケンカから学び、解決するまでの過程を経験することで、将来の人間関係を円滑に営む素地ができるのです。
ケンカは必要なのです。そして当事者の問題なのです。必ず仲直りできるし、ケンカした後の方が仲良くなるということはよくあります。気に入らないあいつだって、本当は自分にとって必要な相手だからケンカするのです。
まとめ ~雨降って地固まる~
ケンカへの対処法は、子供たちがどのような決断をしてもすべて、その子が選んだということを尊重することです。たくさんケンカもするけど、たくさん仲直りも経験することで、子ども達は大きく成長(心の成長)をしていきます。
子どもの頃、一度だってケンカしたことがなければ、大人になってからでは大けがをします。子どもの頃、全てのケンカを親や先生が解決したのならば、大人になっても誰かを頼るしかなくなります。
一般的には、みんな仲良くという美しい言葉を使いたがりますが、何もしないでみんな仲良くなど、薄っぺらい張りぼてにすぎません。本当に仲が良いとは、お互いに気を遣って、自分の主張を隠して、迎合することではないのです。
私はこれまで何度も、ケンカした後に、前以上に仲良くなっている子ども達を見てきています。先生がうまく仲介できれば、必ず子ども達は自分たちの力で解決します。
ただ、先生は必ず介入してくださいね。問題は介入の仕方ということです。
ちなみに、ケンカの最重要学年は3・4年生です。
この学年でどれぐらい友達というものに真剣に向き合えたかによって、高学年になったときの力の発揮具合が違います。