(2020.6.06 加筆・修正)
大量退職時代を迎え、どの業種に置いても「人材育成」は吃緊の課題でしょう。特に中堅と呼ばれる年代の人たちにとっては若手の人材育成は急務であり、責務であり、避けては通れない重大任務です。コミュニケーションスキル、傾聴スキル、コーチングスキルなど、様々な指南書がありますが、今回は別の視点で「人材育成」を論じてみます。前半は全ての業種に当てはまる内容で、後半は「若手教師の人材育成」について書きます。
人材育成は不可能であると理解した人だけが、人材育成を可能にする。
人材育成について勉強し、実践し、そしてたどり着いたような気になったとき、「ああ、そうか」と、上の言葉にまとめられました。
人材育成は不可能です。
でも、それを理解したときから可能となります。
なんだか訳がわかりませんね。
1 人材育成が不可能な理由
人材育成が不可能な理由は全ての業種に当てはまりますが、私は教育現場に携わっていますので、教育界を例え話として進めます。
若手教師のための人材育成のために、初任者研修というのがあります。北海道では、昔はせいぜい1年だったのが、今や4年に渡ります。さらに5年次研修、10年次研修、さらに免許更新制というものまであります。
さらにさらに、毎年のように校内研修というものがあり、「教師は研修が生命線である」なんて言うことを言われてしまいます。
「これらの研修を受けた結果、教師としての力量は伸びるのか?」
という問いを自分自身に投げかけたとき、私の答えは「伸びる人は伸びるし、伸びない人は伸びない。」とか「伸びるときもあるし、そうじゃないときもある。」とか、もう、どうしようもない真実を言わざるを得ません。
どんなに親切に教えようが、どれほど分かりやすく伝えようが、どれほど共に歩もうが、叱咤激励をどれだけ上手にやろうが……
「伸びる人は伸びるし、伸びない人は伸びない」
というのが真実であると確信したとき、「では、伸びる人はなぜ伸びるのだろう?」という疑問が出てきます。
それで、ずーっと様々な角度から検証していくと、やっぱり1つの真実に行き着くのです。それは、
「伸びる人は自分で勝手に伸びる」
ということです。放っておいても勝手に学び続けています。誰かに教えてもらったり、指導してもらったりもしていますが、結局は自分で選んで吸収しています。
つまり「人は自分の力で成長する」ということです。たとえ、サポーターがいたとしてもです。よくよく観察すれば分かりますが、自分で選んで成長しているのです。
それが本当に分かったとき「ああ、そうか、育成とは成長させることではなく、成長するための材料を提供することなんだな。」と、直接的な人材育成は不可能であることを理解したのです。
すると、新たな疑問が出てきます。
「材料を提供するだけでは人は成長しないのではないか。」
すぐに答えが出ます。
「そりゃそうだ。興味がなきゃね。」
すると、新たな疑問が出てきます。
「どうやって興味を持たせるのさ」
すぐに答えが出ます。
「興味なんて、持たせるものではなく、勝手にもつものだよ。」
押し問答がしばらく続き、やがて1つの真理に行き着きます。
元気があれば勝手にやり始める。
ということです(途中、めんどくさいので省略しました。気になる人は、自分で会話を想像してみてください。もしかしたら「元気があれば勝手にやり始める」に行き着くかもしれないし、他の答えになるかもしれません)。
人材育成とは、本人がやる気になれるように元気にし、後は成長のためのエキスを淡々と提示していくことです。選ぶのはあくまで本人です。
2 人材育成は可能
人材育成をするためには、2つのことをする必要があります。
1つ目は、本人を元気にすること。
2つ目は、提供すること。
どちらも、結構深い内容なので割愛しますが、ごくごく簡単に説明します。
本人を元気にするためには、会話、コミュニケーションを増やすことです。たわいもない話、くだらない話も重要です。そうしているうちに、自分の本音(弱音や愚痴)を語るようになってきます。そこまでくると、相当元気になっています。
提供とは、本人が何を欲しているかを知った上で行ってください。時には投げかけてもいいのですが、本人が欲しいものしか入っていきません。
そして、あげたら、どんな方法でも良いので、入ったものをどう感じるのかとか、やれそうかとか、どう思うのかとか、本人にしゃべらせてください。たとえ、理解が不十分でも、本人なりには相当がんばっているのですから、背中を押してください。
3 若手教師の人材育成
教師の力量と考えたとき、教育技術だと言う人がたくさんいます。まあ、技術だけってことはありませんが、技術は重要です。
技術を上げるための研修が人材育成だと思われていると言っても過言ではありません。まあ、本当はそれだけではないのですが、訳が分からなくなるので、今回は「人材育成=教育技術の養成」という側面に特化して書きます。
技術習得のためには、実は3ステップか4ステップを経なければなりません。その手順については、応用可能な真理です。
まずは知識の「習得」。
何も知らなければ何もできません。知識の習得は、「聞く」「見る」「本を読む」が主流です。多くの人は、ここで分かったつもりになりますが、全く違います。知っているだけで使い物になりません。
次に必要なのは「思考」。
得た知識を自分なりにアレンジしたり、具体的な経験に照らし合わせて考える作業が必要なのです。「知識」は「思考」により一段上がります。
最後に必要なのは「実践」。
実際にやってみることで、かなりのことが深く理解できます。「知識」と「思考」は「実践」により飛躍的に階段を駆け上ります。「知識」→「思考」→「実践」でひとくくりです。
実践をした後にまた考えるということが入るので4ステップですが、考えるというのは実践すれば自然発生するので、3ステップと考えて良いでしょう。
この3ステップをクリアすると、知識は知恵となり、それはすなわち、教育技術の習得になります。ちなみに、仏教用語なのかな?「知恵」は「智慧」と書くそうです。
研修会で可能にしているのは、上記の中の「知識の習得」だけです。「思考」と「実践」に移行しなければ、かなりの割合を忘れていきます。研修会などで教えても、ちゃんと忘れちゃってくれます。だから人材育成というのは、どうしても本人が自分で取り組まなければ身につかないということなのです。
教えてもダメだということではなくて、せっかく教えたのなら、「思考」と「実践」にまで繋がるようにコミュニケーションを取っていく方が効果的であり、人材育成は他力によっては成り立たないということです。
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人材育成に真剣に取り組むのなら、「コーチング理論」と「傾聴スキル」は必須と思って間違い在りません。カーネギーさんの『道は開ける』は、学生の頃に読みましたが、どの職種に置いても大切な「コミュニケーション」について書かれています。