(2020.6.13 リライト記事)
学校では、毎年3月になると次年度の校内体制について動き始めます。誰が何年生を担任するかということや、校内での役割について人材を割り振るのです。学校にとっても教職員にとっても適材適所になれば、すなわちそれは子ども達にとってもありがたいのでしょうけれども、なかなか上手くいかないのが現状です。
この記事は小学校における担任をする上で、是非知っておくと役立つ「どの学年が一番難しいのか?」を、私なりにあきらかにした内容です。新年度が始まる前には、一応教職員の希望を聞かれますから、参考になると思います。
どの学年が一番難しいか(一般的な見方)
20年の教員人生の中で、私の周りにいた皆さんの心の動きや実際の行動の様子を見ると、現実はこうなっています。
【一般的に考えられていると思われる 学年 難しさランキング】
1位 6年生 高学年でやることも多い。
2位 5年生 思春期にさしかかり、反抗してくる子もちらほら。
3位 1年生 最初はみんな宇宙人で手がかかる。
4位 4年生 少し大人になってきたかな?
5位 3年生 まだまだ子ども。
6位 2年生 一番扱いやすい。
私が見た感じではということなので、多少入れ違いはあるかもしれませんね。でも、概ねこのような感じで考えられていると思って良いのではないかと・・・。
途中の3位に1年生というのが入っていますが、それは最初だけで、半年すぎれば、2年生に近づくので楽になってくると、みんな言っています。
ですから、一般的には
高学年 → 中学年 → 低学年
という順で難しいと思われているようです。
校内体制の傾向
そのため、私が今まで見てきた現場では、次のような現象が見られます。
高学年は力のある先生が持つと思われている傾向が強い。
自分に自信がないと、高学年は持ちたがらない。
時々ですが、「自分は高学年の担任をしているからすごいんだぞ!」と思い込んでいる先生もいる。
良いとか悪いとかということではなくて、このような現象が起こりやすいです。
もちろん、そうじゃない学校もあるでしょう。あくまで私が見聞きした一般的な様子であって、多くの学校ではこうなりやすいという意味です。
そして短期的、つまりは1年間という単位で見るのならば、これで概ね良いという考え方もうなづけます。高学年が荒れてしまうと、それはすなわち学校が荒れるということとほぼイコールになりますから。
結局、1年間の学校運営を優先した上記の考えが良いとされやすいのでしょう。
「1年間を安全に過ごすための順位」なら、私もこれで異論はありませんが、「どの学年が難しいか?」と聞かれれば、答えは変わります。
どうやら一般的には「難しい」ということと「安全に」ということを混同して考えてしまいがちです。混同し、思い込みによって起こっている現象ということでいいでしょう。私はすべての学年の担任をしましたが、やることはいつも同じですから。
・子ども達に安心・安全の場を提供し、勉強を教える。
・子ども達に集団生活の素地を育成する。
・子ども達と一緒に遊ぶ。
などなど。
教科や学年によっての違いはあっても、子ども達と接するという面において基本的には同じなんです。学年というよりも、その学級に在籍する子どもの人数とか、少し扱いにくいような子が何人いるかということの方が、実は重要な要素となるというのが事実ですが、混ざってしまうので「学年」に限定して考えていきます。
さて、やることが同じならば、難しさの順位は本当には存在しないのか?ということになりそうですが、そうではありません。やはり難しい順位はあるというのが私の至った結論です。
その難しさとは「子どもを自然なる姿で伸ばすための難しさ」とでも言いましょうか、「子どもらしさを保ちながら教える難しさ」とでも言いましょうか、つまるところ「子どもの発達段階における関わり方の難しさ」なんだと思います。
※「子どもらしさ」については、別に記事を書いているので、必要に応じて読んでみてください。
どの学年が一番難しいか(私見版)
これまでの経験と、様々な角度から考えてみた結果、難しい学年の順位は以下のようになるとの結論に達しました。
第1位 中学年
第2位 低学年
第3位 高学年
少し意外に思われるかもしれしれませんが、中学年(3・4年生)が一番難しいです。圧倒的にです。その理由を説明します。
まず、子ども達のエネルギーの扱い方に注目してみます。
低学年は、きちんとさせることが当面の目標になりますから、エネルギーは、先生から子ども達へと流します。だから、疲れます。
中学年は、ギャングエイジなので、知的好奇心がマックスです。ケンカもするし、何でもやってみたいという年代です。担任はそのエネルギーをすべて受け止めます。低学年が担任からのエネルギーを出すのに対して、中学年は人数分のエネルギーを受け止めることになるので、数の原理から言っても、一番疲れます。
高学年は、やや落ち着いてくるので、担任はエネルギーをさばきます。「こっちに行ったらいいよ」とか「そっちはダメ」って感じで。
次に、子どもの世界観に注目してみます。
低学年は子どもの世界観、つまり、自己中心的世界の住民です。自己を満たせば良いということになります。
中学年は、自己中心的世界から、客観的世界に移行していく時期です。
ですから、ややこしいです。大人の世界観と子どもの世界観のギャップがあります。さらに、思春期は4年生頃からと言われていますが、実はもうちょっと早いかな?というのが私の実感です。それはつまり、子ども自身の世界観が変わっていく過渡期ということになります。
高学年は、客観的に自分を見ることができるようになってきます。それは大人の世界観と同じ視点に立つことができるようになるということであって、担任と子どもの視点が同じ方だと、理解できる量は増えるということです。その結果として、高学年の世界観は一番理解しやすいということです。
最後に、話の通じ方に注目してみます。
低学年は、1年生は特にですが言葉が通じません。というよりも、話を聞かせるという事に苦労します。聞かせたと思っても、分かっていないことがたくさんあるどころか、ほとんど聞いていなかったということもあります。
中学年は、うるさいです。話なんか聞かないで、たくさん動きたいんだ!という状態です。うるさいレベルもエネルギーがあるので相当です。
それに対して、高学年は「静かにして」と言えば、静かになりますし、言えば理解します。
まだ他にもあるのですが、上記の3つを考えただけでも、中学年が一番難しいと理解できると思います。記事が長くなりすぎるので、次に進めます。
何が誤解を生み出しているのか
では、なぜ「高学年が一番難しい」と思われがちなのでしょうか。
その答えは、おそらく反抗的態度ではないかと思われます。
子どもが小さいうちは、力で押さえつけることが可能ですが、高学年ともなると、そうはいかないということでしょう。
教科が難しくなるからという理由を言いたくなるかもしれませんが、理由としては脆弱です。だって、先生達は高校も大学も卒業しているのですから。高学年の内容の理解が先生方にとって難しいということはあり得ません。そもそも、低学年に教える方が難しいのですから。
高学年が難しいと思ってしまうのは、つまりは人間関係において、高学年は大人に近づいているから、変なコトしちゃったら「ばれる」ってことでしょう。ばれない自信ないよ~って感じだと思います。
でも、これも変な話なんです。
なにが変かって、低学年や中学年だって、子ども扱いでごまかしたら分かるんです。分かるけど、先生に言いくるめられちゃうだけなんです。
特に、中学年を締めつけると、その恨みみたいなのが蓄積されたまま高学年になりますから、当然荒れます。荒れた高学年をさらに締め付けると中学校で荒れます。逆に中学年を中学年らしく、伸び伸びと育てると高学年になって落ち着きます。
以上の理由から、私なりの結論としては、中学年が一番難しく、そして一番学びの多い学年です。中学年を伸び伸びと育てられる先生は、どの学年でも伸び伸びと育てられます。
※中学年を締め付けることでしか押さえられない先生にとっては、高学年は難しいと言わざるを得ません。ただし、パワフルな先生は押さえつけることに成功するので、一見落ち着いているように見えますが、子ども達は喜びません。
また、そのパワーで押さえる術しかしらないけど、高学年を押さえるだけのパワーすらなければ、かなりの確立で崩壊します。
ちなみに、これは私の予想になってしまいますが、中学校は
一番大切なのは中学1年生で、
一番難しいのは中学2年生でしょう。
勉強ではなくて、子どもとたちのコミュニケーションにおいてですが。
まとめ
教師の人間性が未熟ならば、高学年が一番難しいでかまいません。
扱いきれないでしょうから仕方ありません。でも、教師の人間性が高ければ、高学年は苦労よりも喜びの方が多い学年となるでしょう。中学年よりも難しいということはないでしょうね。
私は「教師たちはみんな人間性を高めていける存在である」という立場なので、中学年が一番難しいという結論に至っています。