Nayunayu先生 ~愛のある教室~

現場教師の24年間の実践理論

それでいいんだけど、本当にそれでいいの?

ずれてる


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 6年生の男の子に、とても太った子がいます。私は別にその子の担任をしているわけではないので、関係ないのですが、担任から「いつも車で送り迎えをしてもらっているから、歩けばいいのに」という話を聞いていました。

 先日、担任が不在でしたので、給食時間に補欠で入りました。

 そして、その太った子がいる席へお邪魔して、話を聞くことにしました。

 

 

「君は、毎日車で帰っているという話を聞いたのだけど、本当?」

 彼は「う~」と何故か突然うなり、

「まあ、車で帰っています」と言いました。

「それはどうして?」と聞くと

「遠いから」と答えましたが、同じ班の女の子が「私の家の側だけどね」と。

ちなみに、その女の子は毎日歩いて帰っています。

 

「じゃあ、歩いて帰れる距離だけど、君は車で帰っているんだね」

と確認をしましたら、また「う~」とうなり始めました。なんか、その話題はしてほしくないみたいな感じですが続けます。

「うーって、唸ってるってことは、本当は車で帰らない方が良いと思ってるって事だね。」

「う゛~、……まあ。」

「そっか。あのね、先生はこれが良いとか悪いとかそういう話をしているわけではないのだよ。先生は別に車で帰ってもいいと思っているんだよ。だから、それでいいんだよ。 だけど、君はそれでいいと思っていないってことなんだね。その確認だよ。」

 

 そんな話をしていたら、同じ班の男の子M君が、話に参加してきました。

 

「僕も、車で帰ってもいいと思うよ。だけど、君はそれでいいのかってこと。」

 おっ、かしこい発言だと思い、私が大きく同意することで、M君の発言を続けてもらいました。

「車で帰ってもいいし、歩いて帰っても、僕はいいと思うよ。なぜなら、君がどのように帰ったとしても、僕にはこれっぽっちも関係がないし、全く影響を受けないのだから。だから、君がそれでいいのなら、僕はそれでいいと思うよ。だけど、君はそれでいいのかと聞いてるんだよ。」

「・・・いや、本当は歩いて帰った方がいいと思ってる」

 

 子ども同士の会話って、力強いですね。太った子の心の声を引き出したのです。

 それで、すかさず私から助言です。

 

「だとしたら、君がやっている行動と、思っている思考はズレている。ずれているのなら、一致させた方が楽だよということだ。」と。

 すると、すかさずM君も助言です。

「じゃあ、歩いて帰ったらいいんじゃない? 僕には関係ないけど、君が歩いて帰った方がいいと思うなら、そうしたらいいんじゃない?ってこと。」

 

 側では先ほどの女の子が、わけの分からない議論だみたいな感じで聞いていたので、話を振ってみました。

「君(女の子)は、歩いて帰りたいから歩いて帰っているだよね?」と。

 

「え~、あんまり考えたことなかったけど、友達が一緒だから・・・。」

「いや、そういうことを聞いているわけではない。歩いて帰りたいのか、車で帰りたいのかという簡単な質問だよ。」

「うーん、歩いて帰りたいかな?」

「じゃあ、ズレてない!(私とM君同時に言う)」

 

ついでに、女の子に質問です。

「じゃあ、別のことを聞くよ。君(女の子)は勉強が好きなのかい?」

「好きな時もあるし、嫌いなときもあるけど、やりたくないときの方が多いかな?」

「それでも、勉強をしているんだね。」

「はい、まあ。」

「じゃあ、ズレてる!(私とM君が同時に言う)」

「いやいやいや、勉強ってしなきゃいけないものじゃないんですか?」

「そういうことを議論しているわけじゃないんだよ。勉強したくないのに、勉強している君はズレていて、それは苦しいよという話だよ。」

 と説明すると、M君だけがうんうんと頷いています。さらに説明を続けます。

 

「でも、そのズレを一致させる方法があるんだよ。それは、どちらかを寄せることだ。勉強したくないという気持ちを勉強したいにすれば一致するし、逆に勉強したくないからしないでも一致する。そうすれば楽になるってことだよ。」と。

 

 女の子は「ふーん、よくわかんないな。」と言い、太った彼は給食をモシャモシャと食べていました。

 

 M君だけが、とても良い話ができたという満足そうな表情だったので、

「君(M君)の考え方は、将来きっと役に立つから、大切に育てなさい。今日は先生、とっても楽しかったよ」と握手を求めると

「僕も、なんだか、すごく楽しかったです!」と力強く握り返してきました。

 

 

 ちなみに、M君は毎日送り迎えを車でしてもらっています。

 家、そんなに遠くないんですけどね。

 本人はそれでいいと思っているのですから、いいのでしょうね。