忘れてしまいたいことは、忘れられない。
忘れようとしているうちは忘れることはできない。
しかし、忘れたくなくなったとき、ずっと覚えておきたいと願ったとき、人は忘れはじめる。それは止めることはできない。自分が忘れ始めていることに気づくことすら難しい。
このように、本当に忘れるという現象は、忘れたくない状態になったとき、必然的で自然的に起こるものである。
忘れる自分を寂しいと考えようとする事はできるかもしれないけれども、忘れるという単純な理由から、寂しいと感じる事もできなくなる。
だから、忘れても全く問題はない。
それは必要なくなったから消滅するというだけだから。
それは夢を覚えていられないのと似ている。
夢を忘れても問題がないように、全く問題はないのである。
もし完璧に忘れたのなら、それは過去の束縛からの完全解放を意味している。