子ども中心とは一体どのような状態なのか。
たいていの家庭では、子どもが小さければ小さいほど、子どもに左右されるので子ども中心の生活になっていると思っています。しかしそれは、生活全般において子どもが優先されているということで、子どもの思いが中心になっているとは言い切れません。生活は中心になっていたとしても、思いは中心になっていない。これが多くの家庭で起こっている現象です。
ですから、悪いとか、良いとか、そういうことを言いたいのではなく、少し考えてみる必要があるのではないかということです。
Chapter 01 何でも反対
聞いた話です。
Aさんは、自分が子どもだったとき、自分の意見を採用されたことがなかったと言います。「ご飯何食べたい?」と聞かれて「カップ麺!」と答えては不採用。「どこ行きたい?」と聞かれて「マック!」と答えては不採用。「友だちのうちに遊びに行きたい。」と主張しても不採用。「お祭りで綿菓子が欲しい。」とねだっても不採用だったそうです。
じゃあ、一体何だったら採用されるのでしょうか。
それは、総じて親が良いと判断するものだったということです。
でもね、親が良いと思うものしか採用しないのなら、はじめから聞かない方がよいでしょう。もっと言えば、聞く意味などないのです。子ども達はせいぜい親の顔色を伺って、「これならば親は許可してくれるだろう。」ということを察して主張するようになるだけです。つまりは、自分の意見は二の次であって、一番は人の顔色を見る子に育つということです。
子どもは一度だって自分の願いを聞いてもらったことにはならないのです。
すると、子どもはどう育つでしょうか。
自分が本当の願いを叶えてもらわなかったのなら、人の願いを叶えてあげられる人にはなれないのです。十分に願いを叶えてもらった人だけが、人の願いを叶えてあげられる人になるのです。
逆の視点から見ると、何でも反対されたのなら、何でも反対する人になります。人は誰でも自分自身に許していることしかできないからです。
Chapter 02 誕生日プレゼント
昔、我が子がまだ小さかった頃、誕生日プレゼントを一緒に選びに行きました。
「自分が欲しい物を選んでいいよ。」
こう伝えると、チビ姫は嬉しそうに選び始めます。
たいへん微笑ましい光景ですが、ややこしいことが起こります。
それは、チビ姫は選ぶ力が未熟で、大人から見れば、どうしようもないものを選ぶということです。いえ、言葉が悪かったですね。私から見たらどうしようもないものということになります。
商品開発部は大変優秀らしく、きちんと子ども心をくすぐるように商品を作っているのです。それは大人には分からない子ども心に訴えるものです。
そこで「こっちの方が良いんじゃない?」とか「すぐに飽きちゃうかもね。」とか「これだとずっと使えるよ。」などなど、大人の選ぶ力を披露するわけですが、たいていの場合は聞きません。いえ、聞けない方が良く育っていると言えるでしょう。自分の意見を通そうとしているのですから。
私は「自分でいいと思ったらいいんだよ。」と伝えます。
たとえ大変くだらないものを選んだように見えても「いいのを選んだね。」と伝えるのです。するとチビ姫はとても嬉しそうにします。嬉しい経験をしたのです。
そもそも誕生日ですからね。
その子が一番嬉しいことをするのが誕生日ですからね。
これでいいのです。
Chapter 03 何個まで
下のチビ助とおやつを買いに行きました。
「おやつ、何個まで?」と聞かれたので
「ひとつだよ。」と伝えます。
すると、うーんと考えてひとつ選びます。
選んだおやつは、おまけが中心の到底おやつとは言えない代物です。
おやつなのか玩具なのか分かりません。
いえ、はっきり言って玩具でしょう。
別の日、またおやつを買いに行きました。
どうやら欲しいおやつが2つあったようで、うーんと考えています。
そして「おやつ、何個まで?」と聞かれたので
「2つだよ。」と伝えました。
すると、表情がパッと明るくなって
「私も2つだと思ってた!」ですって。
何が言いたいのかというと、何でも好き勝手は困りますが、どこかに自分で選ぶという経験を織り交ぜることが、子ども中心になるためのコツだということです。
自分自身で考えてみればすぐに納得するはずですが、自分で選ぶショッピングと、何でも選んでもらうショッピング、どちらが楽しいでしょうか。
Chapter 04 子ども中心が自己肯定感を育てる
自己肯定感は、簡単に言うと「自分はありのままの自分でOKだ。」ということで、これが育つと生涯にわたって生き生きと生活できるばかりか、多少の壁があっても乗り越えていけます。
子ども中心がないというのは否定です。
もちろん、親は善意でそうしているのでしょうが、否定は否定です。
それではダメですよと伝えているのです。
あなたは選ぶ力がないのですよと繰り返し伝えているのです。
あなたが選ぶのは間違いだらけで、親の言うことを聞いていればいいのと、そしてそれが親の愛情なのよと訴えているのです。
これらは裏メッセージなので、分かりにくいのですが、否定は否定です。
自己肯定感とは肯定です。
「ありのままのあなたでいいのよ。」と伝えるのですから、全くの全肯定です。
肯定され続けた子が持つのが「自己肯定感」ですから、子ども中心の経験を積めば積むほど、自己肯定感は育つということになります。
何でも反対してしまうのが親の特性ですから、なかなか難しいとは思いますが、少しでも「子ども中心」を経験してみてください。親が子ども中心になかなか出来ないのは、親自身も子どもの時にそうだったからなので、経験がないことのなのです。
しかし経験することはできます。
経験するチャンスは至る所にあります。
もし経験し、我が子の表情を見ることができたなら、今回の記事は大変役になったということになるので、私も嬉しくなります。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。