Nayunayu先生 ~愛のある教室~

現場教師の24年間の実践理論

不登校の理由の3割は担任と合わないから?

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 仕方がないのだけれども、そしてそれも通過しなくてはいけないのだけれども、少々困惑というか、あきれているというか、落胆しているというか、言葉はなんでもいいのですが、報道に怒りすら感じています。

 先日、ニュースを見ていましたら、不登校の原因の3割は「先生と合わないから」が理由で、その具体的なエピソードをインタビューと再現映像で流していました。このニュースを見れば、それ以外の理由についてはインタビューもなにもなかったので、多くの人が「先生が理由である」と思ってしまうでしょう。最初に3割と言っているにもかかわらず、もう3割どころか5割以上は先生のせいだと見てしまうでしょう。

「人は自分が見たいように物事を見る」のですから。

 以前、不登校の記事を何本か書いたので、同じような内容になってしまうかもしれませんが、改めて少しだけ反論しようと思います。少しでも本当の事を知って、不登校の事実に向き合ってほしいことと、先生方に勇気を与えたいからです。

 

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不登校の理由はさまざま?

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 ある意味では、その理由は様々です。

「どうして学校に行きたくないの?」

と親は子どもに聞きます。すると、子どもは何かしらの理由を言わなくてはいけません。大抵は「友だちと合わない」とか「勉強が面白くない」とか、「学校で嫌なことがあったから」と言うしかありません。

 でも、はっきりと断言しますが、それらはただの「口実」です。

 本当の理由は言えないし、本人も自覚していません。

 

 特別支援の子が私の教室にもいます。特別支援なんですが、ほとんど特別な支援は必要なく、通常級の子たちと一緒に勉強しています。

 その子の表情は暗いのです。暗い理由は様々ですが、月曜日が一番暗い。

 本来であれば、週末でエネルギーを補充して元気に登校の月曜日のはずですが、そうはなっていない。この事実をまずは真摯に受け止めます。

 以前は、友だちとのトラブルを訴えてくることもありましたが、教室の雰囲気が良くなるに従って、トラブルは減り、周りの子たちは元気になっていきます。そして、周りの子たちが元気になればなるほど、その子は暗くなっていきます。

 トラブルだけではありませんが、その子が口実としているものをどんどん取っ払っていきました。すると、次のような現象が起こり始めます。

・お腹が痛い日がある。

・頭が痛い日がある。

・授業中にトイレに行くという口実をつくって出て行く。

・前髪が伸びてきて目が隠れる。

・マスクは黒を愛用する。

・授業中は話を聞いていない。

・些細なことで被害者になりたがる。

・全ての動作が遅くなる(教科書を出すとかノートに書くとか並ぶとか)。

・遅刻を繰り返す。 

                ・・・・・・・等々

 

 さて、最近のことです。

 私はかねてより、その子の担任をしている先生(A先生)に

「そろそろ限界なので、お母さんに来てもらって話をした方がいいのではないでしょうか。私も必要なら同席しますよ。」

と伝えてありました。A先生の見解も私と同じでしたので、母親に連絡していたのですが、体よく断り続けられていました。

「まあ、来たくないのなら仕方ないでしょうね。ただ、いつ気づくかの問題ですし、そもそもご家庭のことですから、無理強いはできませんね。」

と話していました。

 その数日後。

 A先生から「その子が家で勉強が分からないから学校に行きたくないって言ってるという話だったので、本人とも話して、しばらく国語と算数はマンツーマンでやってみようってことになりました。」との報告を受けました。

 私は「そうですか。私の授業が分からないということはないのですけど、そういうことにしたいのですね。まあ、いいんじゃないですか。これで「勉強が分からないから学校に行きたくないという口実」もなくなるので、いよいよ困るでしょうけど、それも必要ですね。」と伝えました。

 

 その子にとっての学校に行きたくない理由は、私の授業が分かりにくいそうです。ほらね、先生と合わないからになってるでしょ?

 

 不登校は、様々な理由を口実にするんです。

 口実にして訴えるので、対応する人はそれらを1つずつ取っていきます。

 すると口実がなくなります。

 それで仕方がないので、口実にしやすいところを口実にするしかないのです。

 なぜでしょうか?

 それは、本当の理由が言えないし分かっていないからです。

 分かっているのは「学校に行きたくない」ということだけです。

 

 A先生がマンツーマンで教えることになった次の日、その子は“お腹が痛くて欠席”しました。欠席の理由は腹痛になっていますが、まあ、本当の理由はごちゃごちゃと混ざっているだろうなあというのが、私とA先生の共通認識でした。

 

不登校の本当の理由に気づけないと決して終わらない

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 私は報道にあきれているのです。

 理由を「担任の先生と合わないからだ」とすれば楽でしょうけれども、なんら解決はしないからです。そして担任の先生なら何を言っても失礼にならないとでも思っているのでしょうか。そもそも学校というのはそういうことが言いやすい場所でしょうけれども、本来的には「不登校になってしまって困っている」ということでしょう。

 ですから、担任の先生と共に、その子のことについて考えていくのが本道です。子ども達の見せる顔は、家庭用と学校用があるので、家庭だけの姿を見て「これが我が子の姿だ」とは言えないのです。さらに、交友関係の様子などは、学校でしか見ることができません。例え自宅に友だちを呼んで、遊んでいる様子を見ていたとしても、それはどうしても親の前ですし、友だち達も遊びに来ているという側面を感じ取って行動していますから。

 

 不登校の理由。

1 学校の先生と合わないから。

2 友だちと合わないから。

3 勉強が分からないから。

4 学校が面白くないから。

5 いじめ問題。

6 ただ何となく行きたくない。

 この中で、早急に大人たちが対応しなければいけないのは、「いじめ問題」だけです。いじめについては、学校側でしか対応できませんし、あってはならない案件ですから、不登校の理由としてもあるでしょう。しかし、それ以外の理由はかなり怪しいのです。もし、1から4までの理由を全て取り除くとどうなるでしょうか。

 

 学校の先生には何ら落ち度はなく、友だちとのトラブルもなく、勉強もこれ以上教えようがないほど丁寧に教え、クラスのみんなが楽しめるような毎日を過ごしているとします。

 でもね、断言しますが、そうなったとしてもその子にとっての学校は「面白くなく、行きたくない場所」なのです。例え一時的に行けるようになったとしても、新しい口実ができたら、また行きたくなくなります。

 つまり、不登校の理由で子ども自身が認識できる正解は、6番の「ただ何となく行きたくない」です。本当の理由は子ども自身が認識することは不可能なんです。ですから、不登校の理由を子どもに聞いて、6番ならかなり良い状態です。

 

※最後に誤解のないようにつけ加えます。

 不登校の本当の理由は複雑です。複雑に入り組んだ迷路のようなもので、はっきりと「これです!」と断言できるようなものでもありません。そしてその解決には時間も労力も相等かかります。

 不登校は1つのサインです。私は不登校は悪いとも思いませんし、問題があるとも考えていません。不登校そのものについては問題はないのです。問題は子どもからのサインを受け取れるのかどうかだけです。