Nayunayu先生 ~愛のある教室~

現場教師の24年間の実践理論

おおらかな心で 第2話「クレーム受理」

クレーム受理

(2020.6.14  リライト記事)

 人間関係において、もっとも簡単なのは赤の他人です。距離が遠いですから。しかし、距離が遠く、親密さに置いてはほとんど皆無に等しいからこそ、文句も云いやすいという現象も起きてしまいます。その1つがクレームです。

「おおらかな心で」の第2話は、そんなどこにでもあるようなクレームのお話です。よく「クレーム処理」という言葉を聞きますが、「処理」とか「対処」とか「対応」というのは、どうしても何とかしなくては・・・というようなニュアンスが生じてしまいますが、おおらかな心で見れば、「クレーム受理」が的確な表現になるのかな?と思うような内容です。

 

 

お客さんからクレームを受けたらどうしますか?

 大学生だった頃、ミスタードーナツでアルバイトをしていました。同じバイトの仲間に、コジコジというあだ名の友達がいました。コジコジは、ケンタッキーのおじさんのような、貫禄のある風貌で、大学生には見えません。

 

 私がバイトに入っていない日、コジコジはフライヤーというドーナツを作る仕事をしていました。ですから、これは後で聞いた話になります。

 フライヤーは、ドーナツを売りません。作る人です。作っている最中も、店頭ではドーナツを売っています。繁華街の中のお店で、夜の部のバイトですから、色々なお客さんがやってきますが、中でも、酔っ払っていたり、はじめから不機嫌全開なんていう人もいます。

 そういう人が店に入ってくると、入ってきた瞬間から分かります。もう「イチャモンつけてやる!」と、最初から決めている表情をしていますから。

 

 で、やっぱり売り子に文句を言うわけです。

「その態度はなんだ? 俺は客だぞ!」

 みたいな感じ。

「あい、すみません。」

と謝ってもダメです。

「おまえじゃ、話にならん! 店長を呼べ!」

と、まくし立てます。そういうときは、レギュラーという正社員を呼んでいいことになっています。

※店長がいつもいるとは限りませんから。

 

 それで文句を言われたバイトは、レギュラーさんを呼びに店内に入ったんですが、入れ違いで、たまたまコジコジが店頭に出てきちゃったんですって。

 

 すると、風貌がケンタッキーですから、文句を言っているお客さんが

「おまえが店長か!」

と、勘違いをしたんですが、コジコジはただのアルバイトです。

「店員の態度が悪い! 一体どんな教育をしてるんだ!」

と、コジコジは店長として認定されたらしく、説教されます。そして、一通り文句を言われたコジコジは

「すみませんでした。」

と謝ったら、お客さんは納得して帰ったそうです。 

 

 そんな話を楽しそうに教えてくれたアルバイトの仲間。どうやら、コジコジが店長に認定されたということや、それをそのまま受け取ったのが面白かったようです。私も面白いな~っと思ったのですが、ちょっと疑問が・・・。

 

「ところで、どうして店長じゃないって言わなかったの?」

とコジコジに聞いてみました。すると、

「答えるのもめんどくさいし、怒ってたから、とりあえずあやまったら帰って行っただけだよ。」

と言うのです。

 

 コジコジもまた、つきあいが長いですが、怒ったところを見たことがありません。おおらかな人って、一緒にいるだけで癒されます。

 

 

摩擦はなぜ起こるのか

 国語界で有名な野口芳宏先生の講習会で聞いた話です。

 若かりし頃の野口先生は、保護者からのクレームに困っていた時期もあったそうで、野口先生の恩師に教えを請いに行ったそうです。その時の恩師の言葉を今も心に留めているということで、講習会の参加者たちに教えてくれました。

 その恩師は野口先生に

「摩擦というのを知っているか?」と聞いたそうです。

「摩擦ですか。知っています。物体Aと物体Bが違うベクトル方向に動くときに起こる抵抗力のことです。」と答えたら、

「では、その物体同士に摩擦が生じないためにはどうすれば良いか分かるか?」とさらに聞かれたそうです。野口先生が答えに困っていると

「答えはどちらかの物体が上に行けば良いのだ。摩擦というのは、同じ場所にいるから起こるのであって、どちらかが上に行ってしまえば摩擦自体起こりようがない。つまり君は保護者と同じ場所にいるから摩擦が起きているのであって、教師たるもの、少しでも人間として成熟されれば、摩擦は起こらないのではないかな?」

 と諭されたそうです。

 

「感化される」という言葉がありますが、自分よりも高見の存在に影響を受け、自分も自然とそうなってしまうという現象を言うのだと思います。

 おおらかな心の持ち主と一緒に居られるということは、この感化現象が起こるので、癒されるだけではなく、自分もおおらかな心の持ち主に成長できるということなのかもしれません。

 

 国語の勉強をするなら、野口先生は必読本です。

 

 

もし、今回のお話を楽しんで頂けたのなら、第3話も読んでみてください。 

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